TRY AND ERROR

自宅NOCオペレータの運用備忘録。

HOMENOCインフラ部で同人誌を作った話

 HOMENOCインフラ部では2021年冬のコミックマーケット99、2022年夏のコミックマーケット100に参加し同人誌を制作頒布しました。なかなかレアな経験ですので、その舞台裏の話を一問一答形式でまとめておこうと思います。

コミックマーケット100での出展風景

HOMENOCインフラ部ってなに?

 インフラ部はHome NOC Operators' Group内の一部の会員によって作られた団体内のサークルで、通信インフラをこよなく愛する会員数人で活動をしてします。メンバーは世界各地の鉄塔、アンテナ、海底ケーブル敷設船、ケーブル陸揚局、電話局、通信インフラに関する史跡や記念碑、マンホールなどを訪れて、その姿を写真におさめています。我が国の通信環境は、日本初の電信が1800年代に行われて以来、先人の技術者の失敗と努力によって築き上げたものであり、その努力に思いを馳せることは、電気通信事業者の我々にとって非常に感慨深いものがあります。インフラ部では、様々な施設を訪れ、その技術や歴史を学び、その魅力と先人の努力を後世に教え伝えるために、活動しています。

 とカッコイイことを書きましたが…。オタク趣味の一種ですね。好きなことには妥協なしで全力で取り組む主義です。

なぜ同人誌を作ることになったのか?

 自分たちの活動を誰かに知ってもらいたいということと、整理した記録として残しておきたいという思いが大きいのではないかと思います。直接的なきっかけは、以前、筆者が勤めていた会社には社内サークル制度があり、似たようにインフラ施設を巡るサークルがありました。そこのメンバーだった人も同人誌を出版しており、話を聞いて、自分たちもやってみようかなという流れになったというものです。

 余談にはなりますが、世の中にインフラ施設やマンホールをまとめた記録は殆ど無いように思えます。もしかしたら今作った同人誌が、数十年後に「貴重なインフラ施設の記録」になっているかもしれませんね。

カメラについて

 険しい山の中にある鉄塔、沖を航行する海底ケーブル敷設船など、近付けない対象を撮影することが多いため、ズーム性能を最重視しています。そのため、3000mm相当のズームができるNIKONのCoolpix P1000を使っています。このカメラ、ズーム性能は申し分ないのですが、センサーサイズが小さいため画質がイマイチなのが欠点です。

www.nikon-image.com

 一方で夜間やズームが必要ないシーンではスマートフォンのカメラを使うなど、時と場合に応じてカメラは使い分けています。レンズ交換が可能な一眼レフも欲しいのですいが、高性能な機種とレンズは非常に高価で手が届かないため見送っています。

 余談ですが、P1000も13万円ほどのお値段がします。「アイドルでも、鉄道でも、飛行機でも、ほとんどのオタク趣味は【写真を撮る】という行為があるので、インフラ趣味をやめることになっても、後悔はしない」と友達に言われて買うことを決めた経緯があります。人にモノを買わせるの上手いなぁと思いました。

取材について

 取材は土日中心で、最近はコストを削減するためにメインテーマを決めてその地域単位で重点的に取材に行っています。(どこどこの鉄塔を見に行くので、その地域にある興味ある施設は一気に回るなど) 海底ケーブルの敷設船の入港などは平日に行われることが多いので、そのような時は休暇を取って取材に行くこともあります。インフラ施設の場所の見つけ方について聞かれることがあるのですが、場所や施設の詳細は公開しておりません。同人誌上でも触れていません。各施設の具体的な場所や行き方についても同様です。インフラ施設はその名の通り重要な施設で、セキュリティ上の都合により場所を公開したくない意向の事業者も多い上、情報を悪用されることを防ぐためです。そのため「某所で」や「とある地域」などのぼかした表現が多くなることもありますがご了承を頂ければと思います。なお、既にインフラ施設として役目を終えている記念碑や史跡などはその限りではありません。

 我々も秘密になっている情報をどこか裏ルートで入手している訳ではありません。具体的な手法は差し控えますが、インターネット上や誰もがアクセスできる紙の文献などを駆使して調査を行い、場所を特定しています。珍しいマンホールなどは実際に現地に行かないと場所を特定できないことも多く、おおよその当たりを付けて現地に向かい、長時間歩き回って探すこともあります。

 取材とは言っても、ちょっと変わった観光旅行みたいなものです。現地の美味しい食べ物とお酒を楽しむことは取材の際には欠かせないものとなっています。

製作環境ってどうなってるの?

 製作にはMicrosoft Office(Word,PowerPoint)を主に利用しています。世の中にはAdobeのソフトを使う人も多いようですが、操作方法が難しく、一昔前にあった買い切り版が無くなり、月額課金で結構な出費になります。余り細かいことはできませんが、多くの人が持っているMicrosoft Officeで当面は十分かなと思っています。どうしても写真の修正がしたいとか、AdobeStockの画像を使いたいとかいう場合があるときのみ、1ヶ月限定でAdobe製品を契約して使っています。

 印刷にはプリントパックという会社のオンデマンド印刷を利用しています。20~30部の小ロットでも手頃な価格で高品質な印刷をして貰えます。追加料金を払えば1営業日などの短納期にも対応してくれるため入稿がギリギリになる我々にとっては大変助かっています。

https://www.printpac.co.jp/

価格設定やお金の話

 まず前提として赤字にはならないような運営を心掛けています。趣味であっても、頒布するために作ったものが大量に余って赤字になると良い気分はしないですし、印刷費用などは誰かが一時的に立て替えることになるので、お金の持ち出しが発生するとメンバー間の不和に繋がるかもしれません。印刷はある程度の部数を刷った方が単価が下がります。一方で売れ残りを警戒して数が少なすぎると欠品となってしまい、多くの方に読んでもらいたいという目的を達せられません。難しい判断が求められる部分です。C99とC100では以下の部数を印刷しています。C100では14時頃に売り切れとなりましたが、同人誌ですのでこの位がちょうどいいのではと思っています。

C99:初版40部、二版30部
C100:初版50部、二版50部

 原価は本自体の原価はページ数やフルカラーによって異なるのですが、印刷費は1冊300円前後です。これにコミックマーケットのサークル参加費用、制作に利用したAdobeソフトの利用料、本の運送費や参加メンバーの交通費、初期投資として発生した見本誌スタンド、キャッシュレス決済の端末費用、などが上乗せされています。キャッシュレス決済を利用した場合は決済手数料、BOOTHのオンライン販売を利用した場合は、販売手数料や発送用の封筒代などが掛かります。

 全てを合わせると、一冊の原価は500円前後になるのではないでしょうか。多少上がった利益は次回の参加費用や印刷費用に回しています。できるだけメンバーの費用立て替えを発生させず、単独で持続可能な状態に持っていきたいと考えています。

 また、現金の運用管理は煩雑(お釣りを用意したり、集計したり、銀行に入金したり…)なため、当初からキャッシュレス決済を導入し強く推奨してきました。現金でお支払い頂く人も多いので、C100ではキャッシュレスに強く誘導するため。キャッシュレス割引を導入しました。

 キャッシュレス決済には「Square」を使っています。キャッシュレス決済のプラットフォームは様々なものがありますが、加盟店審査が厳しく、法人格が無いとだめとか、固定の店舗が無いとだめとか、条件がありサークルでは使えないものが殆どなんです。その中でSquareは比較的柔軟な審査をしてくれます。

squareup.com

 C99とC100の決済方式の比率は以下の通りでした。キャッシュレス割引は余り効果を発揮していない気がします。購入回数の約半分が現金による決済でした。コミックマーケット=現金みたいな考えの人が多いのでしょうか。C101以降ご来場いただける方はぜひキャッシュレス決済のご利用をお願い致します。

コミックマーケット以外のイベントへの参加は?

 現時点ではコミックマーケット以外のイベントへ参加する予定はありません。同人誌の制作や販売会への参加はとても時間の掛る作業です。あくまで趣味で空き時間にやっている活動なので、そこまでの稼働を割くのは難しいと思っています。「辛い」と感じることが増えてきてしまったら活動は長く続きません。年に二度だけのお祭りで、心地よい疲れと達成感を感じる位が良いのではないでしょうか。

 技術書展については何度か検討したことがありますが、電子書籍を出すことが参加の条件になっているようです。後述の通り電子書籍はやらない方針ですので、参加の予定はありません。

電子書籍は出さないの?

 良く聞かれますが、現時点では電子版は出す予定はありません。作り手の心情として、紙の書籍を作るというのは非日常の世界でドキドキ&ワクワク感があるんですよね。入稿の期限も決まっていて印刷されれば当然修正はできない、画面上の表示と仕上がりは微妙に違っていて完成が楽しみだったり。そして在庫の書籍がイベントで売れて減っていくというリアルな達成感もある。電子データで配るだけって余り面白くないなと。うまく表現できませんがこんな理由で紙派でやっています。

 また、電子版だと購入の敷居は下がる一方で、興味の浅い人が購入して、誤解を生むようなことがあったりするかもしれません。大量に売って利益を上げるビジネスではないので、本当に興味のある人、欲しいと思ってくれる人に、会場またはオンライン頒布で手に取って貰いたいと思っています。

コミックマーケットと今後について

 筆者はコミックマーケット自体の参加はC99が初めてではなく(サークル参加はC99が初めて)、C70~C75位の時に一般参加として参加したことがあります。当時は中学生位でアニメやゲームなどに興味がありその繋がりでの参加していました。

 当時と比べると随分と雰囲気が変わったなぁと思います。COVID-19の関係もあってか参加者数が減って、身動きが取れないほどの混雑と熱気が無くなりました。テクノロジーの進歩に伴い同人誌のクオリティも全体的に上がってると感じます。コピー本とかは少なくなったのではないでしょうか。

 一般入場、有料化されたのですね。2日来ると4000円+カタログ代で7000円位掛かるんですよね。アーリー入場だと1万円以上。いいお値段です。中高生はこの金額を払うのは大変だと思いますし、若手の新規参入への障壁になってないかなと心配したりします。この辺りは様々な背景があるようですし、ここで論じることでもないのでこの辺にしておこうと思います。

 さて、次回C101の申込も既に済ませております。キャッチコピーは「あなたの知らないインフラがそこにある」です。どんなインフラ施設に出会えるでしょうか?既に新刊の企画はスタートしております。ご期待ください。