RIPE NCCのインターネット計測システム、RIPE Atlasを自宅に導入してみました。
◆RIPE Atlasについて
RIPC NCCの実験的なインターネット計測システムで、数千のプローブを世界中に設置してインターネット上の様々な情報を可視化することを目的としています。個人でも自宅にプローブを設置することにより、プロジェクトに協力することができます。
※RIPC NCC :ヨーロッパや中東地域を管轄するインターネットレジストリ。日本ではAPNICがこれにあたる。
◆入手方法
RIPE NCCに登録すれば個人でも無料で1個Probeを入手することができます。
1.RIPEアカウントの作成とRIPE Atlasの申込
https://atlas.ripe.net/にアクセスし、Get Involved > Host a Probe を選択します。
Step1-create oneを選択しログインページへ移動します。既にアカウントを持っている人はそのままログイン、持っていない人はcleck here to create oneを選択し必要事項を入力してアカウントを作成します。 ログインするとApply for a RIPE Atlas Probeのページが開きますので、必要事項を入力してSubmitをクリックします。
① 個人の場合はResidential/Consumerを選びます。
② 利用しているISP名を記入します。
③ 利用している回線の通信速度を選択します。
④ AS番号とネットワークアドレスの入力欄です。分からない人や非固定IPの人は書かなくても大丈夫です。
※IPv4は/24以上、IPv6は/48以上でないと入力できないようです。
⑤ Please send it to me by postを選択し、下の入力欄に住所を英語で記入します。
⑤GoogleMapで設置場所(自宅や会社)を指定します。
⑥24時間プローブを稼働させられる人はチェックを入れます。
⑦プローブを公開にしたい人はチェックを入れます。
⑧利用規約を読み承諾の上チェックを入れます。
3.Probeの受取
私の場合は申込後10日ほどで、発送先の住所を再確認するメールが、返信後1週間程で国際郵便でプローブが到着しました。(メールには英語で返信する必要がありますが、住所と名前だけですので英語が苦手な人もGoogle翻訳などで何とかなると思います。)
◆ハードウエア
TP-LinkのTL-MR3020というモバイルルーターを利用しており、小型のUSBメモリ中にインストールされている独自開発のソフトウエアが起動する仕組みになっているようです。電源はUSBより供給します。
http://www.tp-link.com/en/products/details/?model=TL-MR3020
◆初期設定
初期設定はDHCPでアドレスが付与されるネットワークで行う必要があります。起動後しばらくしてRIPE Atlasのページにログインし、My Atlas>Probesを選択、My ProbesのStatusがConnectedになっていれば接続成功です。
固定IPアドレスを設定するには、上記の画面で自分のプローブを選択し、Probe's SettingsからNetwork Configurationを開き、任意の値を入力しUpdateをクリックして保存します。保存が完了したら設定した固定アドレスのセグメントにプローブを接続すれば完了です。
◆どんな情報が見られるのか
見られる情報は多数ありますが、その中からいくつかをご紹介します。
1.各DNSルートサーバーへのRTT
m.rootへのRTT
2.各DNSルートサーバーへのTraceRoute
i.rootへのTraceRoute
3.Debogon対象だったアドレス(84.205.83.1)への到達性
84.205.83.1へのPingによる到達性
◆標準以外の計測先の追加
任意の宛先(UDM)を登録して計測を行うことも可能です。My Atlas>Measurements>New Measurmentsをクリックして計測先を作成します。任意の宛先への計測には「クレジット」が必要になります。 クレジットはプローブの稼働時間に応じて(24時間連続稼働すると21,600クレジットが貯まる)溜まっていき、UDMでPingやTraceRouteを行う度に消費(pingは1回につき3クレジットを消費)されます。
biglobe (ping.mesh.ad.jp)へのUDM
◆世界のプローブ稼働状況
2013年11月10日現在世界では4280個のプローブが稼働しています。殆どが欧州と米国ですが、日本では40個程のProbeが稼働しているようです。IPv4のASカバー率は4%程、IPv6のASカバー率は7%程のようです。
◆活用方法は?
RIPE Atlasは可視化ツールの1つですので、得られたデータをどう活用するかというのが難しい部分ですが、個人としては「自宅ネットワークの簡易監視ツールとして、特定ホストまでのRTTをチェックすることによりISPの回線品質のチェック」などが現実的な活用法なのかなと思います。
また、自分の利用しているISPがBGPでどこと繋がっていて、どのようなPrefixを広告しているか、 二次三次ISPを利用している人は上流はどこなのかなどなど、ISP間の繋がりを眺めて見るツールとしても面白いと思います。
日本ではIIJやOCNなど一部の有名ISPにしかプローブが存在しないようで、AS17955のAvisNetに繋がっているプローブも世界で私だけです。小規模ISPを利用している方など、世界で始めて&世界に貢献している気分になれるチャンスですので是非AtlasProbeを申し込んでみてはいかがでしょうか?